2013.8.2 イムズホール(福岡・天神)



 2011年のファンクラブツアーでは、名古屋・大阪ともに立見席であまりじっくりと曲を聴くことができなかったのだが、今回は全会場で全員分の椅子が用意されているらしい。そもそもアンジーのライブって立って楽しむような雰囲気のものではないため、この処置は遅かれ早かれ必要だっただろう。
 ツアー開催告知後にカヴァー曲をやりたいという、個人的には非常に残念な案がアンジーの口から出ていたため、内容にはあまり期待はしていなかった。気持ち的には博多旅行ついでにちょっと寄ってこ、くらいの気持ちでした(ファンとしてあるまじき心情・笑)
 それとアレンジが云々と言っていたから、てっきり今回はバンドもいるのだろうと期待していたのだが、ステージにはピアノとループマシンしかセットされてなくてがっかり……。

 定刻になり、会場が暗転する。
 いつもならちょっと間を置いてアンジー登場なのだが、今夜はすぐに登場し、会場は拍手に包まれた。

 聴いたことのないピアノの前奏とともに、“ラララ”と歌いだすアンジー。この時点ではなんの曲なのかまったくわからなかったんだけど、すぐに“睡眠不足の〜♪”と歌い出したので、ああ、あの曲かと少しげんなり(笑) そう、『たしかに』だ。
 今夜の『たしかに』はスローテンポでしっとりとした感じの歌い方だった。今までにないジャズアレンジに新鮮味を感じるものの、「たしかに」唯一の長所である“ノリのよいテンポ”が封印されたために、会場の盛り上がりはいまいちだった。

 そのいまいちな雰囲気を打ち破ったのが、2曲目の「Train-Train」だ。デビュー当初はツアーなどでよく歌われていたブルーハーツのカヴァー。サビ前の“見えない自由がほしくて 見えない銃を撃ちまくる”のところでは、アンジーが何も言わずとも観客がちゃんと“ア〜ア〜”とコーラスをしていた。さすがマイホームファミリー!

 ここで最初のMC。
 だいたいいつもと同じような台詞を言ったあと、今日のテーマを発表。今日のテーマは“物語性の強い曲”だそうだ。これは俺の好きなあの曲が出てくるんじゃないかと期待。

 MC明けてからの最初の曲は、“WHITE”から「目撃車」が披露された。
 確かにこの曲も一つの物語になってるよね。

 4曲目は“ANSWER”から「Somebody Stop Me」。
 CD収録のとは少し違ったピアノの伴奏が非常に美しい。

 少し残念だったのが、5曲目の「告白」である。
 元々そんなに好きな曲ではないため、一人げんなりしていた。それに追い討ちをかけるように、伴奏がピアノオンリーということもあって曲が映えないのなんの。ここはもう少し選曲を考えてほしかったところだ。

 ここでファンクラブツアーでは恒例になりつつある、プレゼントコーナーである。前回はクイズやジャンケン大会があったが、今回はチケットの半券を使った抽選会オンリーらしい。
 プレゼントの数は前回よりも多めで、主にはツアーTシャツの色違いバージョンや、「夢の終わり 愛の始まり」のポスター、果てはアンジーが今までにテレビ収録や普段着として着てきたTシャツなど多種類。そのどれもに当たらなかったのは言うまでもない(笑)

 プレゼントコーナーが終わり、落ち着いたところで先月リリースされたシングル「夢の終わり 愛の始まり」が披露される。てっきりループマシンを用いて演奏するのかと思いきや、パソコンに保存した収録音源を流しながらの演奏となった。

 7曲目は、前曲のカップリングである「Beautiful」。CDで聴いたときもなかなかにいい曲だと感じたが、実際に生で聴くと更に聴きごたえのある曲だった。伴奏がピアノオンリーということもあり、アンジーの強い歌声が映えていて素晴らしかった。どうせならCDのほうも弾き語りにすればよかったのに、と悔やまれる1曲だ。

 8曲目は、アンジーの代表曲4曲の中から多数決でどれを演奏するかというものだった。
 多数決に参加できるのは今夜アンジーのライブを初めて生で観る人オンリーで、挙手にて数を集計するそうだ。
 上がった曲は、アンジーのデビュー曲である「HOME」、世に知られるきっかけになった「This Love」(個人的には世に知られるきっかけになったのは「Kiss Me Good-Bye」だと思うんだけどな〜)、ヒットシングルの「サクラ色」、そして合唱コンクールの課題曲となった「手紙」の4曲だ。
 結果は手紙>This love>サクラ色>HOMEということになり、「手紙」が歌われることに決まった。(多数決に参加できなかったファミリーからはちょっとブーイング。俺も「え〜」って口に出しちゃった)

「手紙」はさらっと流し(笑)、9曲目は“TODAY”から「モラルの葬式」だった。弾き語りでも独特の雰囲気があっていいんだけど、やっぱりこの曲には西川さんのギターが必要だと再確認。

 10曲目は“LIFE”から「愛と絆創膏」。この日のハイライトはこの曲だと言って間違いないだろう。
 LIFEツアーではエレキギターで攻めのアレンジを見せた曲だが、今夜は打って変わってピアノ弾き語りでしっとりと歌い上げる。これはこれですごくよかった。

 11曲目はループマシンを用いてカヴァー曲を披露するそうだ。
 今までの会場では、このポジションはRIP SLYMEの「熱帯夜」だったそうだが、今夜は趣向を変えて椎名林檎の「丸の内サディスティック」を演奏するらしい。まあ、どっちも知らないからどっちでもいいんだけど(苦笑)

 続いては、ブログなどで兼ねてからアナウンスしていた、ファミリーとアンジーがステージで一緒に演奏するコーナーだ。
「やりたい人ー」とアンジーが声をかけると、通路を挟んだ前の列にいた人が素早く挙手。颯爽とステージに上がる。
 若い男の方だったんだが、ピアノを演奏する技術を心得ているそうで、1番好きな曲だという「エミリー」の前奏をキーボードで弾いてくれる。しかし、肝心のアンジーはエミリーの歌詞をまったく思い出せず、ファミリーからは「え〜」という声が。
 このままではいけないと思ったのか、ならばメジャーな曲の中では何が1番好きか、と訊くアンジー。答えは「宇宙」……って全然メジャーじゃないし!(笑) まあ宇宙ならこの間の武道館公演で演奏したばかりだからアンジーもわかるだろうと思いきや、出だしのフレーズを“彼女に会ったのは”ではなく、“彼女に出会ったのは”と間違えるアンジー。ファミリーから「会ったのは!」と鋭い突込みが飛ぶ。
 そんなこんなで波乱もありながら、ファミリーと一緒に演奏するコーナーは幕を閉じた。

 本編最後は「Power Of Music」。ループマシンでバンドの伴奏をつくり、ミラーボールで会場をディスコ(死語)のように演出する。

 ここでアンジーは一旦退場し、衣装チェンジをして再びステージに。そしてお決まりのグッズ紹介を始める。
 う〜ん……会報を収めるファイルは欲しいな。あれってやっぱり捨てられないから、嵩張っちゃうんだよね。でも高いからやめておこう(笑)

 楽屋乾杯の抽選は当たらなかったから流すとして(笑)、今回のツアーでは、本来ならばアンコールは1曲しか歌わないらしい。しかし今夜は間近に迫った九州での夏フェスの練習も兼ねて「HOME」が歌われることに。ただ残念なことに2番はカットされ、1番のサビが終わると一気に最後のサビまで飛ぶという悪行をやらかした。おまけとはいえ、ちゃんとフルで歌ってほしいと思ったのは俺だけではないだろう。

 今夜最後の曲は、中盤の多数決で2番目に票の多かった「This Love」だった。
 う〜ん……この曲はやっぱりバンドバージョンで、尚且つ山根氏のコーラスがあるバージョンのよさを知っているだけに、どうしても何か足りない感を抱いてしまう。しかし、アンジーの中では3番目に好きなだけに、演奏されたのはすごく嬉しかった。


■総評

 ファンクラブツアーならではのレア曲の面はすごくよかったと思う。しかし、その半面でアップテンポな曲や定番曲に対しては少し消化不良感を持ってしまった。特に「たしかに」「告白」の2曲はピアノ弾き語りでやるにはあまりにも味気なさすぎるし、実際にイマイチ盛り上がりに欠けたことも、その選曲が微妙だったことを表しているだろう。別に無理に盛り上げる必要はないと思うし、逆に「Beautiful」や「愛と絆創膏」のように、弾き語りならではのよさが出るバラードがもう少し多くてもよかったと思う。
 あ、手紙に対して不満があるのはいつものことなので、特に何も言いません(笑)
 
 それと、ちょっと今回は曲数少ないのではないかと思った。時間的にはまだ結構余裕ありそうだったし、もう3曲くらいやってもよかったのではないだろうか?

 よかった点は、前述にもあるように、「Beautiful」と「愛と絆創膏」の2曲だろう。元々いい曲でもあるけれど、歌声が伸びやかで力強さもあり、感涙を誘う素晴らしい演奏だった。


■セットリスト

01. たしかに
02. Train-Train(THE BLUE HEARTSのカヴァー)
03. 目撃車
04. Somebody Stop Me
05. 告白
 プレゼントコーナー
06. 夢の終わり 愛の始まり
07. Beautiful
08. 手紙〜拝啓 十五の君へ
09. モラルの葬式
10. 愛と絆創膏
11. 丸の内サディスティック(椎名林檎のカヴァー)
アンジーと一緒に演奏しよう♪(コーナー名は勝手に付けました・笑)
12. Power Of Music

・アンコール
13. HOME
14. This Love