2014.4.29 佐賀県佐賀市文化会館


 アンジェラ・アキの集大成である今ツアーが始まり、今日の佐賀公演は九か所目となる。
 正直なところベストアルバムには特に価値を見い出せなかったが、ライブのほうは約10年の集大成ということもあり、大きな期待を抱いての参加となった。
 ただ非常に残念なことに、最後のツアーだというのにお馴染みのギターリスト、バタフライズの王子こと(笑)西川進氏は演奏に参加していないという。ぶっちゃけこれで期待は半減。

 会場は佐賀文化会館。ライブでの佐賀県遠征は初めてである。
 席は前から4列目となかなかのポジションであるが、BLUEツアーの広島公演では2列目(実質の1列目)だったし、ツアーの地方会場ではよく当たる列なので特に感動はありません(笑)

 定刻になり場内が暗転すると、アンジーとベースのおっきー、そしてドラムのまーくんがいつになく普通に登場。それぞれの楽器の前に立ち、演奏が始まる。
 1曲目は『告白』だった。「なんでこの曲!?」というのが正直な感想。だってこの曲そんなに好きじゃないし、この間BLUEツアーでもファンクラブツアーでも聴いたばっかりなんだもん(苦笑) ということで、個人的には、集大成のライブにしては微妙な始まりとなってしまった。
 2曲目は疾走感のある『Again』。やっとライブが始まったという気持ちになった(笑)

 ここで最初のMCとなる。
 やはり今回は活動休止についてのコメントとなった。自分の曲を作る技術の限界、ミュージカルを成功させたいという思い、グラミー賞をとりたいという夢――それを叶えるにはいま一歩踏み出さなければならないと思い、活動休止という決断に至ったそうだ。

 MC明けての3曲目は『輝く人』だった。そんなに好きな曲ではないのだが、CDとはまったく違ったアレンジは聴いていておもしろかった。

 続いて4曲目は『Every Women’s Song』。バック演奏の二人がコーラスを入れる。

 5曲目は、アンジーが世間に知られるきっかけとなった『Kiss Me Good-Bye』だ。彼女の曲の中で一番好きな曲なだけに、嬉しい選曲だ。
 1番では、まーくんはキーボードでストリングスの音を奏で、2番から本業であるドラムを演奏する。そういった構成は非常によかったのだが、アンジーの声がまだ本調子じゃないのが残念。

 6曲目は『心の戦士』。好きな曲だけどこのポジションは少し微妙。せっかく静かでしんみりした雰囲気になったのだから、もう1曲くらいバラードを歌ってほしかったところだ。

 いつもならこのあたりで英語でしゃべらナイトが入るところだが、今回のツアーは集大成ということもあり、しゃべらナイトは封印された。
 代わりにアンジーの生い立ちを映像とともに振り返るという、なんとも微妙な(笑)コーナーをやるそうだ。いや、おばあちゃんのエピソードとかおもしろかったけどね。でもこのレポートでは端折ります。

 アンジーが長い話をしている間にステージは少し形を変えていた。中央にはキーボード、その両隣にそれぞれドラムセットとベースなどが置かれ、客席との物理的な距離が更に近くなる。
 ここからは少し違ったアレンジで曲を演奏するコーナーです、とアナウンスがあり、最初に歌われたのは『孤独のカケラ』だった。本人お気に入りの曲だから今夜もきっとやるんだろうな、と思っていたら案の定。ジャズバーなんかで演奏してそうなスローテンポなアレンジが印象的だった。
 続いては『TODAY』。ライトの色を綺麗に反射する黄色いマント(?)にサングラスという奇抜な恰好に衣装チェンジし、DJさながらにミキサーを操りながらの演奏となった。

 ステージがまた元の形に戻り、9曲目に演奏されたのは『モラルの葬式』だった。演出面では後ろのスライドに歌詞をスクロールあるいはフェードインさせるという、新たな試みがなされたのだが、何度も言うようにやはりこの曲は西川氏のギターがないと映えない。しかも形式が違うとは言え、この間ファンクラブツアーで聴いたばかりだから、もう少し捻ってほしかった選曲だ。

 10曲目の『Rain』も、BLUEツアーで演奏したばかり(しかもアレンジは同じ)。人気曲とはいえ、アレンジを捻るなりあったほうがよかった気がする。

 11曲目は2ndアルバムから『愛のうた』が演奏された。嬉しい選曲だけど、2011年のファンクラブツアーで演奏された神アレンジじゃなかったのが少し惜しい。

 続いて12曲目は大御所の『This Love』。なんとなく予想してたけど、やっぱりこの曲が今ライブのハイライト的ポジションに鎮座する。まあ、当然だよね。いい曲だもの。
5周年の記念ライブ以降ずっと言っているような気がするんだけど、この曲はやっぱりあのときの山根氏のコーラスと西川氏のギター、そして河野氏のストリングスがあるバージョンが素晴らしすぎただけになんとなく物足りなさを感じてしまう。

 しんみりした雰囲気を打ち破る13曲目は『夢の終わり 愛の始まり』。

 続いて14曲目の『MUSIC』はエレキギターを抱えての演奏……ってこれこの間HOMEのライブでやりましたやん(笑)

 本編を締めるのは『手紙』だ。世間で話題になった曲ということもあり、最後のライブで選曲されるのも当然だろう。個人的にはいつもどおりの感想ですわ(苦笑)
 とはいえ、合唱曲として評価するならやっぱりいい曲。最後の最後でみんなで合唱とかでもよかったかも。

 ここでアンジーたちは一旦退場し、観客は手拍子をしながら再登場を待つ。…が、いつものように颯爽と本人が現れることはなく、代わりにステージにはスライドが下りてくる。
 流れ始めた映像は、夢を追いかけていた昔のアンジーの姿だった。あちこちへ奔走し、心が折れかけながらもなんとか掴み取ったメジャーテビューという一つの夢。そこからの軌跡を映像とともに振り返り、そういえばこんなこともあったなとしんみりした気持ちになる。
 俺がアンジーを知ったのは、3rd『Kiss Me Good-Bye』がきっかけだった。大好きなファイナルファンタジーシリーズの当時の最新作をクリアし、エンディングで流れた彼女の綺麗な歌声。作中で起用されたのは英語バージョンのほうだったので、歌詞はなんと言っているのかさっぱりわからなかったのだが、綺麗な歌声に心を魅かれたのをよく覚えている。そしてネットで検索してみると、日本語バージョンの存在に行き当たり、さっそく聴いてみると、切ない歌詞に一気に虜にされてしまったのである。
 それから間もなく1stアルバムの『Home』が発売され、『This Love』や他の曲にも感銘を受け、気づけばツアーなら数か所行くような、なかなかコアなファンになっていた。ここまではまった歌手(シンガソングライター)はいままでにいなかったし、きっとこれからも現れないだろう。そんな素晴らしい人の歌を一時的とはいえしばらく聴けなくなるなんて、やっぱり寂しい。そんな思いが映像を見ながら溢れ出してきて、目頭が熱くなってしまった。それに追い打ちをかけるように優しい歌声で『HOME』が歌われ、ついに涙が溢れ出す。
 
 温かい拍手が観客から送られる中、アンジーもまたステージで涙していた。それを見て更に泣いてしまう俺(笑)

 ファンにとってアンジーが特別な存在であるように、彼女にとってもきっとファンは特別な存在だっただろう。自分の夢を叶えるためとはいえ、ここまで応援してくれた人たちと別れることは、きっと辛い選択だったはずだ。くしゃくしゃの泣き顔は、それを物語っているようだった。

 アンコール2曲目は、おそらく未だに彼女の曲の中で一番の人気を誇るであろう『サクラ色』だった。

 そしてこれでライブも終わりかと思いきや、なんと最後にもう1曲歌ってくれるそうだ。二大バラード(This Loveとサクラ色)はもう歌っちゃったから、もしや新曲!? と期待していたが、残念ながら現実はそう甘くない。ライブではすっかりお馴染みになってしまった『たしかに』が、集大成のライブの最後を飾るのであった。


 何やら不満ばかりを書いたような気がするが、全体的には感動的な素晴らしいライブだった。が、集大成と呼ぶには、やはり選曲の面で首を傾げてしまうところが少しある。特に最初と最後はもう少しどうにかならなかったのかなーと。まあこれはもう個人の好みの問題なので突っ込まないでください(笑)
 ツアーもまだ序盤ということもあり、ライブの形がまだ完全に出来上がっていないという印象。次に参加するのは7月の神戸公演なので、それまでにどう進化しているか楽しみである(進化の余地は十分にあると思います)



■セットリスト

01. 告白
02. Again
03. 輝く人
04. Every Women’s Song
05. Kiss Me Good-Bye
06. 心の戦士
 アンジーの生い立ち紹介
07. 孤独のカケラ
08. TODAY
09. モラルの葬式
10. Rain
11. 愛のうた
12. This Love
13. 夢の終わり 愛の始まり
14. MUSIC
15. 手紙〜拝啓 十五の君へ

アンコール
16. HOME
17. サクラ色
18. たしかに