2009/12/26 日本武道館

毎年行われていた武道館ライブも今回でいよいよ四年目となり、
生で楽しむのは二度目となった。
ANSWERツアーが大変素晴らしかっただけにこのライブへの
期待はかなりのものとなっていた。

今回のライブはいい意味でも悪い意味でも意表をつかれることの
多いものだった。
正直に言うと若干の消化不良を残してしまったのだが、
その原因の大半はアンコール二曲目にあるわけであって、
全体的にはそれなりに楽しめるものだった。


ステージは昨年と同じく北側に配置され、これまた昨年と同様に
バックには巨大なスクリーンが構えてある。
ってかこれじゃまた北側の席の人たち見られないよね。
昨年の反省はしなかったのか(笑

十分押しくらいでまもなく開演のアナウンスが流れ、スクリーンに
アンジーの姿が映し出される。
どうやらこれは楽屋の生の映像らしく、そこからステージに登場するまでの
過程をカメラが追いかける(というか先を行く)感じだ。
そしてアリーナの脇から本人登場。凄まじい拍手と声援が会場を包み込んだ。

冒頭に「意表をつかれた」と書いたが、このライブで最も意表をつかれた
のは一曲目に歌われた曲かもしれない。
なんと一曲目は、アンジーの隠れた名曲『Our Story』だったのだ。
印象的なイントロが流れるなり、会場からはいつになく激しい拍手が鳴り響いた。でも手拍子は絶対いらなかったよね。

一曲目を終え、ここでいつもの挨拶を兼ねたMC。
そして今日のテーマは“つながり”であると発表される。
あれ、それっていつもと変わらなくね?

聞き飽きた心のもやもやをうんたらという台詞を後に、
聴きなれないピアノのイントロが流れ始める。
レナード・コーエンの『Hallelujah』だ。
ここからアンジーの『ハレルヤ』に入る流れは神がかっていて、
これだけでもこのライブの満足度が大きく膨れ上がった。

三曲目『We're All Alone』に続いて四曲目は『This Love』。
声の張りも絶好調で、力強い歌声に場内は圧倒されまくり。

さて、ここでいつもの“あの”コーナが来るわけだが(笑
正直このコーナー早くなくならないかな、と毎度思っている。
なぜかって、そりゃこのコーナーがなければアンジーの曲を
四曲くらい多く聴けるわけだから。
それに最近はすっかりネタ披露会みたいになってるし、
流れを妨害していることは鮮明である。
もちろんこのコーナーを毎度楽しみにしてる方もいらっしゃるだろうけど、
俺の気持ちはこんな感じです。
まあ、面白いんだけどね(笑

今夜の勝手に英語でしゃべらナイトはU.S.A. For Africaの
『We're The World』。ごめん、原曲知らねーやと早くも傍観を
決め込んでちょっと休憩(笑
マイケルの死は世界中でかなりニュースになってたら
彼関連の曲が選ばれるのも妥当だよね、と思いながら
コーナーから脱線してまたネタ披露会になっているのを眺めてましたが、
その辺の描写は致しません(笑

盛り上がりを引き継いだままハイペースな『On&On』に入る。
しゃべらナイトの後はだいたい『On&On』か『Again』を演奏することが
多いのですが、今回は二択のうち好きなほうが出てきてちょっと嬉しかった。

ここでいつものようにMCが入る。今夜はアンジーの友達のお話。
デビューするずっと前、お互いの夢を語り合っては支え合った友達がいた。
何度も挫折しながらも、アンジーはその友達の
「終わりと思ったときが本当のスタート」という言葉に支えられ、
2005年についにメジャーデビューを果たす。
しかし作家を目指すその友達はまだ夢を叶えられず、
自分の実力を信じることができなくなってしまっていた。
そんな友達を見てアンジーは、以前もらった
「終わりと思ったときが本当のスタート」という言葉をそのままかけてあげた。
そうして何年か経った後に友達も作家デビューを果たし、
なんとその人の書いた『ガーゴイル』という作品は世界三十ヶ国語に
訳されるほどの大作となる。
なんともいい話を聞かされて軽くうるっと来た。
そして“夢”に関連した曲といえばやっぱりあれかな、
と一番最初の武道館で初披露されたあの曲を思い出す。
そう、『サクラ色』だ。ピアノ一本で歌われたそれは、
恋と夢に生きたであろうワシントン時代への思いと、
友達と夢を語り合っていた頃の気持ちを力強く訴えかけている。

それに続いて歌われたのは『愛の季節』のカップリングとして発売された、
BOYZ II MENのカヴァー『It's So Hard To Say Good-Bye To Yesterday』だった。
個人的にはこのライブのハイライトはこの曲。
CDのレビューにあるとおり、発売された当初いろいろなことがあって
この曲にはかなりの思い入れがあった。
そういえばあの時はあんなことやこんなことで辛い思いをしていたな
と当時のことを思い出し、不覚にも号泣してしまった。

前曲に続いてこのライブの目玉となったのが『宇宙』である。
ベートーベンの『月光』をピアノで少し演奏した後、そのままあの不気味な
イントロが流れ始めたときはいい意味で鳥肌が立ったのを覚えている。
『レクイエム』ほどの迫力はないものの、ステージを彩るライティングと
アンジーの極端に強弱をつけた歌い方は独自の世界を作り上げ、
その壮大さに圧倒された。

宇宙の後、しんと静まり返ったステージに見覚えるのある格好をした
女の子たちがわらわらと湧き上がる。
NHK東京児童合唱団だ。TVで手紙が披露されるときに必ずと言っていいほど
バックに彼女たちの姿があったのも少し懐かしい話になる。
どうやら以前から噂になっていたスペシャルゲストとは彼女たちのことらしい。
正直がっかりだった。というのも、自分はスペゲの話が上がったときから
“ベン・フォールズが来てくれる!”と信じて疑わなかったからだ。
まあそりゃお前が勝手に熱望してんのが悪いだろ、という突っ込みは
とりあえず禁止です。自分で分かってるもん(笑

だがそんながっかり感も、彼女たちの歌声を聴いて一瞬にして吹き飛んだ。

最初に歌われたのは『ふるさと』(う〜さ〜ぎ〜お〜いしってやつ)だった。
アンジーの力強い歌声とは対照的にどこまでも澄んで綺麗な彼女たちの
それに会場は心を掴まれたようだった。もちろん俺も。
続けざまに歌われたコーラスつきの『HOME』にはもうね、感動だった。
昨今ではしゃべらナイトの手前や初っ端から出てくることの多かった
『HOME』が、久々に聴かせるパートに出てきて満足だった。

ここで突然アンジーがオヤジ化する。
今年の流行語は何かと言い出し、“政権交代”と知るや彼女たちにそれを
言わせ始める。その発声を気に入って続いては“草食男子”…って
何遊んでるんですか、アンジー先生(笑

次に披露されたのは意外にも『乙女心』だった。
コーラスがつくとまた違った感じがして楽しませてもらった。
そしてMCを挟んで続いては『手紙』。
別になくても困ることはなかったのだが(笑)、歌う側ではなく聴く側に
立つのはずいぶんと久しぶりのことだった。
『手紙』に関して俺の評価はかなり低い。
しかしそれはアンジーの曲の中での評価であって、
この世に数多く存在する合唱曲の中では一番好きである。

はてさて、ここで武道館ではお馴染みの新曲のコーナーである。
タイトルは『輝く人』。
人間誰もが輝く人をなりたいと頑張っている。
けれどそこにたどり着くまでには幾多もの壁を乗り越えなければならない。
そんなとき、自分の中にその“輝く人”がいることを忘れないでほしい。
記憶が曖昧だがそんな内容の曲だったと思う(適当
なんと新曲はピアノ弾き語りではなく、ギター弾き語りでの披露となった。
おそらく会場にいるほとんどの人がアンジーのギター弾き語りを
目にしたのではないだろうか? もちろん俺も初めてのことだ。

ここからはラストに向けて走っていくパート。
『たしかに』『ANSWER』の連番だった。あれ、『エミリー』は?
なにやらしっくりこないものを感じながらも本編はこれにて終了。

アンコール一曲目はてっきり俺の大嫌いな懐メロのコーナーが来るのかと
思って休憩モードに入っていたが(笑)、どうやら今夜も昨年と同じく
洋楽のカヴァーを披露するらしい。
歌われたのはジョニ・ミッチェルの『River』。
世代の違いか単に自分が洋楽に関して無知なだけなのか、
アンジーのカヴァーする曲って毎度原曲知らない(笑
知らないながらも懐メロよりは単なるカヴァーのほうが
俺的には満足のいくものだった。

さてさて、冒頭でも述べたように今回はアンコール二曲目が
原因で消化不良を感じてしまったのである。
そのアンコール二曲目がいよいよ歌われる。
俺は最後の最後で『ダリア』が歌われるだろうと信じて疑わなかった。
ANSWERツアーの中でもひときわ大きな喝采を浴びていたこの曲が
歌われないはずがない。
しかし、あろうことか最後に来たのは『愛の季節』だったのだ。
CDのレビューにもあるように、愛の季節に対する俺の評価はあまり高くない。
アンジーの中でも威力のない曲のひとつだと思っているし、
ライブの締めに歌われるにはいろいろと足りないものが多い。
前半あれほど素晴らしいライブを築き上げていたというのに、
この選曲には本当にがっかりさせられた。
そんながっかり感を抱えながら武道館ライブは終了となった。


★総評

今回非常に残念なことに二番カットがえらく増殖していた。
まあ、武道館は時間に厳しいっていうからその点はしょうがないのかな?
また全国ツアーで全曲フルで歌ってくれることを切に願っている。

アンコール二曲目に関しては俺の好き嫌いの問題だから
そこらへんの愚痴は軽く聞き流してほしい。
パフォーマンス自体はすばらしかったと思うし、ピアノ弾き語りだと
CD音源とは違った味わいがあって良かったと思う。

これも俺の好き嫌いの話だが、俺的アンジーソングベスト10の
1位『Kiss Me Good-Bye』と2位『ダリア』の両方が歌われなかったのは
非常に残念だ。どちらもどちらかというと影の曲だからそれも仕方ないのかもしれない。
(でも『This Love』が歌われるのに『Kiss Me Good-Bye』が歌われない
ってのも変な話だよね。アンジーが知られるきっかけになったのって
明らかに後者なのに)
いつかこの二曲がフルで歌われることを信じて、次のライブを楽しみに
している次第だ。


★セットリスト

01.Our Story
02.Hallelujah(レナード・コーエンのカヴァー)〜ハレルヤ (二番カット)
03.We're All Alone(二番カット)
04.This Love
05.We're The World (U.S.A. For Africaのカヴァー)
06.On&On(二番カット)
07.サクラ色
08.It's So Hard To Say Good-Bye To Yesterday
09.月光(ベートーベン)〜宇宙

-----NHK東京児童合唱団とのコラボ------------------

10.ふるさと〜HOME
11.乙女心
12.手紙〜拝啓 十五の君へ〜
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13.輝く人(新曲)
14.たしかに(二番カット)
15.ANSWER(二番カット)

アンコール
16.River(ジョニ・ミッチェルのカヴァー)
17.愛の季節