2010.12.20 大阪城ホール



大阪城ホールでのライブといえば、浪花のMY KEYSからすでに二年もの
月日が経過していることに改めて驚かされる。
あのときのライブは本当に散々で、選曲、新曲、音響のどれも満足のいくものではなかった。
まさに悪夢と言ってもいいだろう。
アンジーのライブの中では未だに(唯一)ワーストに位置している。

そんなことを思い出しながら、二年ぶりに大阪城ホールへと降り立った。
今回の年末ライブは、例年とは違いアンジーとピアノのみの構成ではなく、
バタフライズの三人にスペシャルな方々を加えた特別構成で送るそうな。
LIFEツアーでのバタフライズの演奏が素晴らしかっただけに、
演奏員の構成だけでも期待はかなり大きいものになっていた。

二年前の浪花のときと違い、どうやら今回はセンターステージではなく
壁際背面のステージを使うらしい。
ピアノやその他の楽器はそのようにセッティングしてあった。
そして例により座席には赤と白の封筒が置かれていたので、
てっきりいつものいらぬコーナーがあるのかとがっかりしたのだが、
それは杞憂に終わりました。よかった、本当によかった(笑)

開演時間十分押しくらいでついに場内が暗転する。
そして最初に演奏者の人たちが登場。コーラスの山根さんの背格好が
アンジーに似ていたのでてっきり本人かと思った(笑)
少し遅れてアンジーは登場すると、ピアノには着かずセンターステージのほうへと歩いてくる。
すると、何もなかったはずのセンターステージにはいつの間にやらもう一台のピアノがセットされていて、
アンジーはそちらに腰を下ろした。

なんとなくなのだが、このときなぜか俺の中で“心の戦士が来る!”という言葉が湧き上がった。
そしてそれは見事に的中し、一曲目は『心の戦士』が演奏された。
たしか最後に演奏されたのは浪花のMY KEYSのときだったと思うので、
生で聴くのは約二年ぶりのこととなる。

続いては『Again』という、少し微妙な選曲。
盛り上げるにしてももっと違う曲があったと思う。

ここで最初のMCが入る。
今回はいつものもやもやを吐き出すやら目を閉じて近くに感じてくださいという
お決まりの台詞はなかった(と思う。俺が聞き逃しただけ?)
そしてさっそくバンドメンバーの紹介。
ギターの進ちゃん(笑)、キーボードの河野さん、ドラムのまーくん、ベースのおっきー、
コーラスの山根さんという、アンジーのワンマンライブでは過去最多の人数でこの日はお届けする。

三曲目は俺の好きな曲ナンバー1、『Kiss Me Good-Bye』だった。
生で聴くのは心の戦士と同様に約二年ぶりのこと。
これだけでもライブの満足度は一気に跳ね上がる。ただ二番カットなのが残念。
そういえばこの曲、ライブではピアノ弾き語りでしか歌われたことがない。
つまりバンド演奏での『Kiss Me Good-Bye』は今回が初めてなのである。
久々だから、というだけでなく、それがあるから新鮮に感じたのかな?
それと一曲目から感じていたのだが、大阪城ホールはやっぱり音響悪いね。
二年前よりマシになったとはいえ、やはり音割れが耳に痛い。
音響担当さんのせいなのか、それとも会場の設備のせいなのかはわからないが。

四曲目はまさかの『愛の季節』だった。
この曲、とても人気投票で票を集めたようには思えないし、曲自体のインパクトが薄いので、
今回のような良曲ぞろいのセトリの中では浮いているように感じた。

続いては、これまた意外の『孤独のカケラ』だった。
インパクトはあっても、この曲もやはり票を集めたようには思えない。
それにこのライブで演奏するのであれば、LIFEツアーでセトリに取り入れる必要はなかったと思う。
それこそ、LIFEツアーという名が付いているのだから“The Truth Is Like A Lie”や
“What Are The Roses For?”を選曲するべきだっただろう。
まあ、アンジー自身のお気に入りでもあるので仕方がないとも言える。

しっとりとした曲が続いた後は、『MUSIC』が一気に空気を変える。
今夜の『MUSIC』はこれまで聴いてきた『MUSIC』とは一味違っていた。
途中からアンジーはスタンディング・ハンドマイクというスタイルに変わり、
最後はコーラスの人と“Can you hear the music?”の掛け合いやスキャットなどで
進化した『MUSIC』を演出する。
それにしてもこの曲、ライブにてフルで聴くのって初めてである
(フルで演奏されたことはあるにはあるのだが、残念ながら居合わせなかった)

いつもならこの辺でいらぬコーナー(笑)が来るところだが、
今回はどうやらないようで、代わりに少し長いMCが入る。
(長いと言っても徹子ネタより少し長いくらいだったと思う)

今回の長いお話(笑)は、アンジーの両親がハワイの飲食店で
とあるロックバンドの一員に遭遇したエピソード。
アンジーの母親はロックに詳しくないので、その男性が誰なのかまったく分からなかったそうな。
その代わりに(?)「実は私の娘、日本でシンガソングライターをやってるんです。
武道館というところでもライブをやったんですよ」といった調子でアンジーのことを自慢したらしい。
そして彼と別れるとき、「娘だったらロックに詳しいので、あなたのバンドのこと知っているかも。
だからバンド名を教えて」と彼に訊くと、「“METALLICAメタリカです」
と返ってきたという。
メタリカというバンドを知らない俺は、最初“ふ〜ん”くらいにしか思わなかったのだが、
大阪城ホールの観客が騒然としたのを見て、“え、そんなすごいバンドなの?”と説明を待つ。
メタリカはマイケル・ジャクソン並みにCDを売り上げたロックバンドで、
いまさっきwikiで調べてみると数々の記録や賞を手に入れているらしい。そりゃ、観客も騒然となるよね。
ロックに疎いアンジー母もさすがにメタリカのことは知っていたらしく、その場で呆然となったそうな。
しかもそんな凄まじいバンドの人にアンジーのこと自慢しまくったから余計に呆然だよね(笑)

そんな奇跡のゼロ次遭遇を語った後、シングルには必ず
カヴァーを一曲入れていることについて少し触れる。
今回の人気投票で、カヴァー曲の中で一番票の多かった曲を次に演奏するらしい。
個人的には“It's So Hard Toy Good-Bye To Yesterday”か“Without You”を歌ってもらいたい
ところだったが、カヴァー曲ナンバー1はSMASHING PUMPKINSの『TODAY』だった。
最近はすっかり聴かなくなってしまったが、割と好きな曲なので嬉しい選曲。
この日アンジーの歌唱力が最も発揮されていたのはこの曲だったと思う。

続いては、人気投票でもかなりの票を集めた『One Melody』を演奏する。
五周年の特別ライブということで、いつものピアノ弾き語りバージョンではなく、
なんと西川先生のアコギ&コーラス付で演奏するそうな。
これがまた実に味のある『One Melody』で、CD化をお願いしたいほど耳にしっとり響いた。

西川さんが退場し、アンジーはセンターステージからメインステージへとゆっくり歩いていく。
その先で河野さんが待ち構えていたので、おそらく次の曲はLIFEだな。
そう思っていると、予想通りに『LIFE』の前奏が始まった。
この曲があのRainを破ってベスト5入りしたときはびっくりだったが、
たしかにアンジーの未来を指し示すことから、重要な曲とも言える。
二番カットなのが非常に残念。

河野さんと入れ替わりで、今度はおっきーとまーくんが登場する。
どうやら次の曲はこのトリオで演奏するらしい。
それに踏まえてこれまでのシングルのB面曲は必ずトリオの曲を入れているとアンジーは話す。
「ね、みんな知らなかったでしょ?」と得意顔で言っていたが、
残念ながら結構な人が気づいていると思います(笑)
シングルカップリングから一曲ということで、選曲されたのは『空はいつも泣いている』だった。
なんと、『空はいつも泣いている』は人気投票最下位だったそうな。
ドラムのまーくんはこの曲が結構気に入っているらしい。
この曲だけでなく、アンジーの三拍子ソングは大好きだそうだ。
たしかにアンジーの三拍子ソングってはずれがないよね(ダリア、This Loveなど)
演奏では、おっきーのコーラスがばっちり合っていて、聴いていて非常に気持ちよかった。

そしてここで他三人のメンバーがステージに復帰する。
西川先生が、疾走するような軽快なギターのメロディー鳴り響かせていると、
なんとアンジーはエレキギターを背負って登場。いったい何の曲が始まるのかとワクワクしていると、
「安全地帯の家を出て〜」という『輝く人』の最初のフレーズが飛び出してきた。
『輝く人』といえばアコギでしっとりという印象が強いものの、
今夜の『輝く人』はエレキでガンガン攻めるらしい。
テンポも速いものになっていて、まったく違う曲を聴いているかのような錯覚を起こしてしまう。
だがそれがまた良い。ぜひともCD化してほしいものだ。

ここでMCが入る。
「私の曲はラブソングが圧倒的に多い。けど、ラブソング以外にも
“生と死”をテーマにした曲なんかもつくってます」
なんて言うから、てっきり次はノッキンが来るのかとがっかりしていたが、
アンジーの口から飛び出したのは『宇宙』『モラルの葬式』『レクイエム』の三曲だった。
そして今夜、五周年の特別なライブということで、この三曲を合体させ、一つの物語にするという。
俺の心が歓喜と期待に沸いた。たぶん、俺の後ろの席の女の人も
同じような気持ちだったと思う。ってか声に出てたよ(笑)

この新しい組曲は主人公の“理性”、その息子の“モラル”、
そして不思議な女性“宇宙”の三人の登場人物によって物語が展開される。
上手いこと三曲を繋げられたことも然ることながら、ところどころに語りを
入れるなど、いままでにない形の演奏は実に素晴らしかった。
特に西川さんのギターが素晴らしかった。昔アンジーが言っていたように、
彼のギターは曲の世界を鮮明にするようだ。

迫力ある寓話組曲の後は、弾き語りで『Rain』をしっとり演奏する。

ここで何かしらMCを挟んだような覚えがあるのだが、
内容をまったく覚えていないのであしからず(笑)

続いて人気投票で三位に着いた『This Love』。
やはり人気とあって拍手も一際大きかった。

さて、問題は次の曲である。
河野さんが鉄琴らしき音で奏でたのは、あの『たしかに』だった。
LIFEツアーのときも散々叩いたが、今回ももちろん叩かせてもらいます(笑)
別にここで無理に盛り上げる必要はなかったと思うし、“Again”と同様に盛り上げるにしても
もっと別の曲があったでしょう(On&On、Bop Bop Bopなど)
五周年の特別ライブで、なぜよりにもよって歌詞のレベルが著しく低いこの曲なのか…
満足度が少しばかり削られる選曲だった。

本編ラストを飾る曲は、やっぱりこの曲。
アンジーがデビューしてからの五年で最も大きな一曲となった『手紙』だ。
ここでアンジー本人が歌うということになれば、個人的にはかなり白けていたところだが、
今夜は合唱ということで少し安心する(合唱曲としては好きなので)

約一万人の合唱が終わると、アンジーたちは一旦退場する。
再び登場したときは、やはりいつものようにグッズ入りの手提げ袋を持っていた。
そしていつものようにグッズ紹介。サクラ色ハンカチの復刻版は手に入れたかったものの、
あの高いパンフレットを買わなければならないので断念(笑)
そして再びバンドメンバーを呼び込むと、アンコール一曲目が演奏される。

アンコール一曲目は、人気投票No.1の『サクラ色』だった。まあ、妥当な位置だよね。
五周年の記念ということで、久々の初武道館バージョンでの演奏だった(バンド付だけど)
でもたしかあのときって、ふるさとのくだりの後に“Keep on dreaming all your life.”が
入ってたよね? 今回はそのくだりの前に入っていたから完全な再現とは言えないな(苦笑)

さて、次の曲をもっていよいよ大阪城ホールでの公演は締めくくりとなる。
最後はアンジーのデビュー曲であり、彼女が最も重宝している『HOME』である。
ピアノ弾き語りでしっとりと歌い上げ、大阪城ホールでの公演は終了となった。


■総評

俺が過去に参加したライブの中ではNo.1の完成度だったと思うが、
“五周年の特別なライブ”にしては少し物足りなさを感じたのもまた事実である。
その主な原因の一つは選曲である。久々だった『Again』は目を瞑るとして、
『愛の季節』『孤独のカケラ『たしかに』の三曲はとても多くの票を集めたようには思えないし、
この間LIFEツアーにて演奏したばかりだ。無論、『たしかに』以外は決して悪い曲ではないが、
その辺はもう少し捻ってほしかった。

もう一つは『Kiss Me Good-Bye』と『LIFE』の二番がカットされていたこと。
しゃべらナイト、懐メロのない、せっかくの“聴かせるライブ”なのだから
全曲フルで歌うのが当然だろう。というかなぜよりにもよってこの二曲なのか理解に苦しむ。
(もっとカットできる曲あったでしょ。“たしかに”とか“たしかに”とか“たしかに”とか・笑)
『レクイエム』などの長い曲が一部カットされてしまうのは仕方がないと思うが、
大して時間を取らない曲を縮めてしまうのは、単に手抜きとも受け取れる。

と、愚痴を先に言わせてもらいましたが、最終的な感想としては実に良いライブだったと思います。
せっかくバタフライズがそろっているというのに、半分近くの曲を弾き語りにするなどという暴挙(笑)
をやってしまったLIFEツアーと違い、バンドの演奏をたっぷり楽しめたので大満足である。
特に西川さんのギターには圧倒されたり、うっとりしたりでした。
一番好きなのはまーくんだけどね!


■セットリスト

01.心の戦士
02.Again
03.Kiss Me Good-Bye
04.愛の季節
05.孤独のカケラ
06.MUSIC
07.TODAY(SMASHING PUMPKINSのカヴァー)
08.One Melody
09.LIFE
10.空はいつも泣いている
11.輝く人

12.寓話スペシャルバージョン
 〜宇宙 モラルの葬式 レクイエム〜

13.Rain
14.This Love
15.たしかに
16.手紙〜拝啓 十五の君へ〜(合唱)

アンコール
17.サクラ色
18.HOME