2010.10.17 福岡サンパレス



 デビュー五周年(音楽活動15周年)を詰め込んだ4thアルバム『LIFE』――“ダリア様様”な前作とは違い、近作は満遍なく聴きとおすことができた(母なる大地の前奏はカットしてるけどね)
 そんなLIFEのツアーとあって期待していたものの、アルバム収録の英語曲はたったの二曲という少なさで、しかもかなり気に入っていた曲が削られるという有様だった。
 しかし、選曲には多少の不満があるものの、ライヴそのものは俺の行った中では過去最高だったように思う。その大きな要因となったのは、アンジーの歌唱が最初から最後まで絶好調だったこと。そして、ほとんどの曲がフルで歌われたことの二つである。

 このたびのツアーは俺の地元山口での公演がないというので、福岡まで赴くことになった。TODAYツアー・ANSWERツアーともに絶大な盛り上がりを見せただけにかなり残念である。


 思ったよりも狭い福岡サンパレスのホールに入り、五分押しくらいで場内が暗転する。
 阿波のときと同様に、アンジーの登場はかなり普通だった。まあ、時間短縮にもなるし普通でいいんだけどね(笑)
 ピアノ弾き語りとバタフライズとの演奏の二部構成というのは事前に耳にしていたが、どうやら前半が弾き語りパートらしい。最初からバタフライズでガンガンやるのかと思っていただけに少し意外。
 アンジーがピアノに着き、一曲目に歌われたのは1stアルバム収録の『大袈裟に愛してる』だった。個人的にかなり好きな曲なので嬉しい選曲である。
 また、アンジーにしては珍しく、立ち上がりにしてはかなり声の調子がよかった。フェイクを入れつつ、伸ばすところは伸ばし、安心して聴くことができた。ただ、二番カットなのがいただけない。

 ここでいつもと変わらないMCを挟み、次に歌われたのは『Unbreakable』である。アンジーの英語の曲の中では二番目に好きな曲だ。

 続いては、ライヴでは初めて聴く(Homeツアーは行ってません)『お願い』。1stアルバムの中ではあまり好きではない曲なのだが、この日はアンジーの声の調子がいいことと、ラインティングが美しいのもあって、かなりじっくり聴き入ることができた。

 間髪いれずに『孤独のカケラ』が演奏され、続いて明らかに選曲ミスの『Final Destination』が歌われる。
 この曲はドラムとベース、そしてコーラスあっての曲なので、弾き語りではかなり無理がある。後半に出てくる愛の季節と入れ替えたほうがいいのでは?

 ここでMCを挟む。内容は初めてサインを求められたときの話で、その求めてきた相手がアンジーの名前なんて読むのかわからなかったそうな。だからそれ以降サインには振り仮名を振っているそうです(笑)
 それに原点の話を掻い摘んで、『母なる大地』が演奏される。
 俺がこの曲を好きになれない理由は、どうやらメロディーよりも編曲のせいらしい。ピアノのみだと“名曲”と徹子ばりに三回呟きたくなるほど味のある曲に感じられた。あとあの長い前奏はやっぱりいらない。

 母なる大地の次の位置に鎮座するのはこの曲しかいない、『HOME』だ。ただ、今回は母なる大地が圧倒的すぎただけに少しインパクトに欠ける。あとバンドバージョンのほうが好きです。

 さて、ピアノ弾き語りパートもいよいよラストの曲を迎える。ラストはライヴの満足度を著しく低下させる要因の一つ『手紙』である。
レビューで何度も書いているように、この曲はアンジーが歌うものではなく、あくまで合唱曲だと思っている。商業的にやらなければならないにしても、こんなあたかもメインのような位置でアンジーが歌うのではなく、いらぬ懐メロコーナーを潰して全員合唱にするべきであった。いや、合唱もそろそろなくしていいかもしれない。

 弾き語りパートは絶対『HOME』で終わりにしておいたほうがよかったな、と心中で愚痴りながら十五分の休憩に入った。いろんな方が“休憩はないほうが流れを妨害しなくてよい”と言っていたが、この日は正直休憩があって助かりました。なんだか知らないけど三曲目の『お願い』の時点からすごくトイレに行きたくて堪らなかったんです(笑)

 休憩の後、再び場内が暗転する。いよいよTHE BUTTERFLIESによる演奏が始まるのだ(はっきり言って今回のライヴはここからが本番)。
 登場前から会場はスタンディングオベーションに包まれ、一部のアンジーの登場よりも凄い盛り上がりを見せた(後のアンジーから突っ込みあり)
 それにしても西川氏を生で見るのはずいぶんと久しぶりである。TODAYツアー以来だから約三年ぶり? 相変わらずのキノコ頭と(笑)パフォーマンスの素晴らしさに感激である。
 まーくんはやっぱりカッコイイ。バンドでのライヴのときはアンジーよりもまーくんのほうばっか見ちゃいます(笑)
 ANSWERツアーで明らかに不自然なカツラを被っていたオッキーはというと、今日はなぜかスーツ姿での参加。あんた突っ込んでほしいのか(笑)

 拍手喝采の中、最初に歌われたのは『愛の季節』だった。
 う〜ん、やっぱりこの曲はピアノのみのほうがよかったかな〜。前述にもあるとおり、弾き語りパートで明らかな選曲ミスだった『Final Destination』と入れ替えてほしい。いや、むしろ愛の季節を弾き語りパートに持っていった上で、この位置は“Mad Scientist”のほうが、満足度がかなり上がっていただろう。

 MCを挟まず、続いてLIFEの看板曲でもある『Every Woman's Song』が演奏される。何度聴いてもいい曲。

 そして今度こそMCを挟むかと思いきや、何やら聴き慣れないイントロが流れ始めた。そう、今回のライヴではこの位置であのいらぬコーナーが入るらしい。
 はっきり言ってこのいらぬコーナーは、毎度ライヴの満足度を最も下げる要因になっており、今回も例外なくせっかくの演奏時間をがっつり奪っていった。このコーナー潰して“Mad Scientist”“The Truth Is Like A Lie”に加え、隠し玉として“Kiss Me Good-Bye”や“ダリア”なんかを歌ってくれれば大絶賛していたことだろう。無論、そんな願望が叶うわけもなく、いつものネタ披露会となってしまったが。
 ちなみに選曲はスティービー・ワンダーの『I Just Called To Say I Love You』。世代的にかなりどうでもいい選曲である。特筆するとするなら、「スティービー・ワンダー(のラブソング)はストーレートに、アンジェラ・アキは回りくどく」というアンジーの台詞かな。結構ツボでした(笑)

 ようやくいらぬコーナーを脱し、黒柳徹子の話をした後、『輝く人』が演奏された。
 CD音源とは違い、今回のライヴではバンドバージョンでの演奏となる。正直アンジーのギター単品よりもこちらのほうがかなりいいと思った。

 ここからいよいよ俺の大好きなバラード連発になるわけだが、アンジーはピアノに戻らずなんとエレキギターを抱えてセンターに立つ。いったい何が始まるのかと構えていると、“辛いのはあなたじゃない この私なんだ”という、アンジーの楽曲の中でもかなり俺の心を掴んだフレーズが飛び出した。そう、『愛と絆創膏』だ。
 後に出てくる“Remember Me”もすごくよかったが、今回のハイライトは間違いなくこの曲。TODAYツアーのときの“モラルの葬式”ばりに迫力のある演奏がいまも耳に残っている。

 続いて、阿波ではアンジーの歌唱が非常に残念だった『This Love』だ。今回はいつになく声の調子がよく、高いパートも張りが合って素晴らしかった。

 少しMCを挟んで、今回のアルバム・ツアーのタイトルチューンである『LIFE』が歌われる。

 そして今回のライヴでは“愛と絆創膏”に次ぐ完成度を見せたのが『Remember Me』。特に最後の“Remember me, Remember us”のコーラスをリピートするところが、別れに対して残ったわずかな未練が切実に感じられてよかったと思う。個人的には“サクラ色”を遥かに凌ぐ別れの曲である。

 バラード連発が終わると、やはりいつものようにラスト二曲は盛り上げていくらしい。まーくんのドラムソロを挟んで『たしかに』が演奏される。はっきり言って今回のセトリにおいては、あのいらぬコーナー×2を除けばこの曲が一番不必要だった。本来なら盛り上がるところなんだろうけど、個人的にはげんなり……。
 盛り上げるにしてもこの位置は“Bop Bop Bop”が妥当だろう。つーか、“たしかに”なんてアンジーの曲の中では一、二を争うほど人気ないんじゃない?

 そしてラストの『サイン』に流れて、本編は終了となった。

 アンコールは歌の前に、いつものようにグッズの紹介が入る。お金がなくて(笑)購入は最初から断念していたが、バタフライTシャツとLIFEの買い物袋は欲しかったね。

 さておき、バンドのメンバーをもう一度紹介した後に、しゃべらナイトに次ぐいらぬコーナー、懐メロのコーナーが乱入する。やはり世代的にどうでもいい選曲で、さっさと終わらないかな、むしろこのコーナーなくならないかな、などと心中で愚痴りながら終わるのを待つ。

 そして、いよいよをもってこのライヴのラスト・ソングが歌われる。ラストは『サクラ色』。出来レースすぎてつまらないし、この曲をラストに持ってくるっていうのは少しおかしいと思う。
 今回のライヴの締めくくりは、未来を示す意味でも“LIFE”が妥当であろう。あるいは、はっきりと過去の失恋を思い出の一つとして完結させようとした“Remember Me”でもよかった。とにかくサクラ色という選曲は明らかに不自然であり、なんだか少し締まらない最後になってしまったことは否めない。



■総評

 なんてもったいない、というのがまず一つ。何のことかというと、バタフライズの演奏曲数について。せっかくバンドメンバーがそろっているんだから、バンドでの演奏曲数をもっと増やすべきだと思う。だからわざわざ二部構成にする必要もなく、いつもどおり、バンド演奏の中に少しだけ弾き語りがあればよい。今回のセトリで言うなら、弾き語りは『大袈裟に愛してる』『お願い』『母なる大地』の三曲だけでも十分で、あとはすべてバンドでの演奏にしてもまったく問題ないだろう。
 選曲と構成についてはいろいろ問題あり。特に『手紙』『たしかに』は今回のライヴの雰囲気にまったく合っておらず、かなり浮いているように感じた。

 今回もいらぬコーナー×2はあったものの、MCはだいぶ抑えていたように思った。ANSWERツアーのときなんか二曲に一回MC入れていたから、それを考えるとアンジーも少しは成長したんじゃない?(何様・笑)
 また、冒頭にも書いたようにほとんどの曲がフルで歌われたのは実に嬉しい。といってもANSWERツアーのときはカットって『レクイエム』と『Again』の二曲だけだったので、その点はもう少し頑張るべきだと思う。
 
 


■セットリスト

○ピアノ弾き語り
01.大袈裟に「愛してる」
02.Unbreakable
03.お願い
04.孤独のカケラ
05.Final Destination
06.母なる大地
07.HOME
08.手紙〜拝啓十五の君へ〜

○THE BUTTERFLIES
09.愛の季節
10.Every Woman's Song
11.いつもの(いらぬ)コーナー=I Just Called To Say I Love You
12.輝く人
13.愛と絆創膏
14.This Love
15.LIFE
16.Remember Me
17.たしかに
18.サイン

○アンコール
19.いつもの(いらぬ)コーナー2=学園天国
20.サクラ色