6th『BLUE』

・発売日 2012/7/18


 ここのところ消化不良感の否めないアルバムが続いたアンジェラ・アキだが、今作「BLUE」は本人も自信作と豪語していたとおり、非常に満足のいく出来具合となっている。


01. アイウエオ ★☆☆☆☆

 短いフレーズの中に“アイウエオ”の中に詰まった無限のものを感じさせる曲。
 アルバムのプレリュードを飾る短い曲で、正直あってもなくても困りませんでした(笑)


02. 告白 ★★☆☆☆

 詳しくはシングルのレビューを参照。


03. Foolish Love ★★★★★+

 新しい恋をしても結局“違う顔をした同じ人”と恋に落ちてしまう。そこから抜け出せない馬鹿らしい恋を描いた曲。
 この曲、試聴がスタートしたときからすごく気になっていたんだけど、実際に聴いてみると“あ〜、アンジーだ〜”と感じさせる世界観があった。
 特に印象づいたのが最後のサビ。“あなたに期待をしても無駄なだけだ 育たない関係に水を与えているだけ”というフレーズが強烈だった。自分の経験と重なる部分があるだけに、アルバムの中では最も共感できる曲だった。


04. 恋の駆け引き ★★★★★

 好きな人に対して素直になれず、駆け引きをしてしまうちょっと不器用な恋を描いた曲。
 俺自身は恋愛において駆け引きなんてしない人間なので、共感できるようなところはなかったが、アンジーの可愛い一面が窺えて、聴いていて楽しい曲だった。


05. Cry ★★★★★

 涙を流すことは決して悪いことじゃない。むしろ次に進むには必要なこと。
 Aメロ・Bメロでは結構ネガティブなことを言ってるんだけど、サビで泣くことをポジティブに捉えようとしている。いつものアンジーなら落ちるところまで落ちて、それを引きずっている曲が多いだけに、珍しいと思った。


06. In My Blood ★★★☆☆

 少し理解するのに時間がかかったが、要は失恋の痛みや未練を生々しい言葉を用いて訴えた曲。
 かなり遠回しな歌詞で実にアンジーらしいが、曲調はノリのいいリズミカルな感じに仕上がっている。


07. You and I ★★★★☆

 アンジーの楽曲では初めてウクレレが使用されている。歌詞のほうが非常にユーモアで、ベートーヴェンの第9が挿入されていたり、曲中に台詞が入っていたりと、いろんな試みが窺える。


08. モンスター ★★★★☆

 アルバムの中でも異彩を放つ、子どもの持つ恐怖心を煽るようなダークな曲。
 言われてみると、確かに子どもの頃って寝るときに電気を消すのが怖かったり、押し入れの中に何か潜んでいるんじゃないかと思ってたりしていた記憶がある。それに追い打ちをかけるように当時NHKの海外ドラマで、ベッドの下にキノコっぽいモンスターがいて、子どもが引きずり込まれてしまうっていうのをやっていて、トラウマになりました(笑)


09. 心の天気予報 ★★★★★

 失恋はとても辛く、心の中にはしばらく雨が降り続けるかもしれないが、いつかは必ず晴れる。そんな“Cry”にも繋がるような失恋応援ソングだ。
 編曲は“愛と絆創膏”でその名を轟かせたRyousuke"Dr.R"Sakaiさんということで、バラードでありながらも攻めな曲調になっている。


10. factory ★★★★★

あまり自分らしさを見せず、まるで機械のように生きる現代人に警鐘を鳴らした曲。
 明るくアップテンポな曲調でありながら、歌詞は無感情に生きる現代人をしっかりと表しており、最後は“完璧じゃないから(人間は)美しいんだ”という一言に集約されている。


11. 夜明け前の祈り ★★★★★+

 壊れてしまった愛、もう訪れることのない昨日――そんなものに未練を抱き、もう一度手にしたいと願う切実なバラード。
 個人的には“Foolish Love”のほうが好きだが、多くの人がこの曲を今作のNo,1ソングに選ぶことだろう。それくらい素晴らしい曲であり、あの“サクラ色”や“This Love”と並んでもおかしくない出来だ。


12. BLUE ★★★☆☆

 タイトルチューンなのに一番印象に残らなかったのがこの曲(笑)


13. One Family〜宇宙の渚スペシャルバージョン〜 ★★★★★

 既出の曲のアレンジを変えただけということであまり期待はしていなかったのだが、聴いてみるとストリングスのアレンジが曲の壮大さを引き立てていて、すごくよかった。



■総評

 冒頭でも述べたように、今作は非常に満足のいく作品であり、個人的には1stアルバムに匹敵するほどの完成度だと思っている。
 中でも「Foolish Love」「Cry」「心の天気予報」「夜明け前の祈り」といったバラード勢はシングルとして出してもおかしくない出来だ。
 アップテンポな曲もいろんなチャレンジ精神が垣間見え、聴く人間を決して飽きさせない。
 強いて言うなら「告白」はもうちょっとどうにかならなかったのかな〜と(笑) せっかくアルバムの完成度が素晴らしいというのに、先行の曲があんなんじゃ注目されないよ。
 とにもかくにも、最近のアンジーに対して何か足りないと思っていた部分が満たされ、ツアーにも安心して参加できるというものだ。
「WHITE」「SONG BOOK」と微妙なアルバムが続いただけに、今後の活動について少し心配していたのだが、こんな良作を生み出す力を持っていると改めて感じさせられたので、まだまだ期待はできそうだ。