4th『LIFE』

・発売日 2010/9/8


 LIFEというタイトルのとおり、アンジェラ・アキの人生を詰め込んだ作品である。
 英語の曲が半分、日本語の曲半分、という形式は、半分をワシントンで、もう半分を日本で生きてきたという、彼女の人生をそのまま表しているかのようだった。
 デビュー五周年という区切りの年に、ベストアルバムではなく今回のアルバムを出したことは実に彼女らしい。というかベストなんて出ても俺買わないよ。すでに出しちゃった曲の再録なんていらんわ(笑)


01. 愛の季節 ★★★☆☆

 四季の変化とともに移り変わる二人の気持ちを書いた9thシングル。
 やはりどうしてもドラムに違和感を覚えてしまう。


02. 輝く人 ★★★☆☆

 初のギター弾き語りで収録された10thシングル。
 人生応援系はどうしても好きになれない。


03. Every Woman's Song ★★★★★

 ジャニス・イアンとの共作。
 女性は皆それぞれのストーリーを歩んできて、国籍や人種、住んでいるところも全然違うかもしれないが、原点は同じだ。目には見えないけどちゃんと繋がりがあって、だからすぐに打ち解けて姉妹のようになるのだ。そんなメッセージが込められた、壮大な女性賛歌である。
 最後のサビはアンジェラの他に十数人の女性のバックボーカルが入っており、曲のコンセプトに合っててすごく良かったと思う。


04. サイン ★★★★★

 身の回りの不思議な出来事は偶然起こるのではなく、何かしらの“サイン”であると歌った、アップテンポなナンバーだ。
 この曲を通して、ナッシュビルのギタリストよりも西川氏のギターのほうが好きだな、と感じた。まあ、慣れもあるんだろうけど。


05. Remember Me ★★★★★+

 過去の失恋は辛くはあったけど、決して無駄ではなかった、と自分に言い聞かせようとするも、まだ一歩前向きになりきれていないバラード。久しぶりのアンジーオリジナルの別れの歌になる。
 亀田氏の編曲と聞いて、サクラ色のこともあってどうなることかと心配していたのだが、今回はピアノ以外の楽器が前に出すぎず、アンジーソングの雰囲気を壊すこともない、なかなか良い編曲になっている。
 前向きになろうとしている姿に隠れる未練がましさや、反対言葉を組み込んだ辺りは実にアンジーらしい。


06. Unbreakable ★★★★★

 寂しさで鬱になってしまいそうな夜を乗り越える為、強く壊れない心をください、と切実に訴えかける曲。メロディーは本作の中でトップである。


07. What Are The Roses For? ★★☆☆☆

 メロディーも歌詞もイマイチピンとこなかった、ちょっと残念な曲。


08. 愛と絆創膏 ★★★★★

 恋をした相手には彼女がいて、彼はこちらの気持ちに気づかず、彼女の相談をしてくる。あげく自分のことを親友と断言されるなど、彼の無神経ぶりと叶わない恋に苦しむ、ドラマにありそうな展開の曲。本作の一番好きな曲でもある。
 試聴したときは弾き語りのほうがいいのではないかと思っていたが、フルで聴いてみると、アンジーの言うとおり相手を責め立てる意味で派手にしたのは正解だったと思う。


09. Mad Scientist ★★★★★

 自分の行動をいちいち詮索してきたり、観察したりしてくる嫉妬深い相手を、“Mad Scientist”と比喩した曲。アンジー史上最もユニークな曲と言っても過言ではない。
 これは束縛される側の気持ちより、束縛してしまう相手の気持ちのほうがなんとなくわかってしまう。たしかに自分の好きな人って自分だけのものにしたいよね。特に知り合いの集まりにいったときなんかは、手を伸ばすと届くところにいないと気がすまないし、目を離さない。でも、友人関係にまで口を出してくるのはさすがに行き過ぎである。
 試聴のときはアルバムの中の一番の駄曲だと思っていたが、フルで聴いてみるとそんなことは全然ありませんでした(笑)


10. The Truth Is Like A Lie ★★★★★

 アンジーらしい、未練でいっぱいいっぱいの別れの曲である。
 別れても尚、相手のためにコーヒーを作る、テーブルをセットする、電気を点けておく……。別れを受け入れられず、まったく動かない心が少しずつ死んでいくという歌詞は、実にストレートに振られた側の心境を表している。


11. Bop Bop Bop(Color Of Your Soul) ★★★★★

 ジャニス・イアンとの共作第二弾。
 Every Woman's Songとは打って変わって、アップテンポな曲である。


12. 母なる大地 ★★★☆☆

 昭和の香りを感じさせる、“和”のメロディーと歌詞が印象的な曲。
 歌謡曲なメロディーはどうしても受け入れられないが、“ふるさと”に対する思いは、あの“HOME”をも凌ぐ熱烈さを感じさせる。
 前奏ははっきり言ってなくても困らないよね(むしろないほうがスムーズに聴けたような……)


13. LIFE ★★★★★

 アンジーのこれまでとこれからを指した、希望のバラード。
 TODAYとANSWERの流れから、今回もタイトルチューンはアホソング(笑)が来るのかと思っていたが、予想外の良曲がアルバムを締めてくれる。
 出会いと別れまでの間に真実があるというフレーズは、別れに執着した歌詞の目立つアンジーにしては、ずいぶんと前向きだと思った。


■総評

 セールスは散々のようだが、完成度は過去のアルバムと比べても1、2を争うほどの出来だと思う。不等号で表すなら、Home>LIFE>ANSWER>TODAYといった感じ。
 前作に収録されていたダリアのような破壊力のある曲はなかったものの、今回は全体的にレベルが高く、アンジーがいかに力を入れたか伝わってくる。ただ、このアルバムの中ではシングル二曲がどうしても浮いてしまう。いっそあの二曲もアルバムオリジナルソングにすり替えてしまえば、もっと評価は高かったかもしれない(そんなわがままな・笑)